追手門学院高校・表現コミュニケーションコース活動ブログ

大阪府茨木市にある追手門学院高校・表現コミュニケーションコースの活動ブログです。普通課のカリキュラムに週8時間、演劇とダンスの表現教育を行っています。日々の活動の様子をお伝えします!

アートによる社会包摂リサーチ実習② ~社会のなかに活かされるアートを体感しよう~

前回の記事

アートによる社会包摂リサーチ実習① ~社会のなかに活かされるアートを体感しよう~ - 追手門学院高校・表現コミュニケーションコース活動ブログ

 

【ココルームWS参加&釜ヶ崎探索】

7月に入ってからは、2チームに分かれて、釜ヶ崎にあるココルームを訪問。

動物園前駅を降りた先の商店街を進んでいくと、わっと華やかな建物が!

假奈代さんはココルームを「喫茶店のふりをした大学」とお話していました。

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緑が豊かな庭もあり、その真ん中では、井戸を作成中!

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たくさんの面白そうな活動をしていますね。

motion-gallery.net

 

【WSの様子】

1チーム目は、7月12日(金)「釜ヶ崎の表現と世間をめぐる研究会」(講師:前川紘士 先生)

アートの価値ってだれが決めるの?というテーマのもと、生み出された表現はどのように世間のなかで存在するのか、その価値はだれがどのように決めて、どうやって残っていくのか(はたして消えてしまうのか)ということを考える時間となりました。

 

生徒の感想

前川紘士さんのお話を聞いて、私が注目した言葉は「時間」というキーワードだ。卒業公演の練習中に余越保子さんも「時間」について触れていた。

舞踊は、時間には残らないが、その場で巻き起こる私たちの存在を見て、何かを感じてもらうことや、繋がりを持つことができる一方で、美術は描いた人が亡くなっても作品は残り続け、その作品から見えてくるエピソードを想像すること、またその作品に影響を受けて新しい描き手によって新たな作品が作られたりと、人と人が繋がっていく。

このように、芸術にも「時間」の流れが存在し、人と人を繋げ、様々な形のコミュニケーションの取り方があることを改めて学び、芸術は身近にあるものだと思うので、多くの人に知ってもらえるように発信していきたいと思った。

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 生活保護受給者の方と社会を繋ぐ活動をされているココルームに行ったときに、部屋一面に作品が飾られてあって、その作品が部屋のデザインになっていたのが、すごくすてきでした。作品の居場所であると同時に、作者の方たちの居場所にもなっているように感じてたくさんの方の居場所なのだなと感じました。

その作品の中には、亡くなった方のもあって、前川さんが「アートが残すのは、亡くなった方がこの世界でなにを見たか、それを見た時間、それを描いている時間。」とおっしゃっていて、私たちがやってきた芸術は「今」をうつすものばかりで、芸術とは儚く消えていくものだと思っていたから、形が残るって素敵だなと思いました。

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2チーム目は、7月23日(火)「俳句部」(講師:西川勝、高木智志)に参加。

今日初めて出会った人も、そうでない人も含めて、そこにいる全員と一緒に俳句をつくりました。

 

生徒の感想

皆さんそろってとてもウェルカムで自分のままで居やすかったです。

一人一人の個性や存在感が、誰一人として自分を殺してそこに居なかったことに感銘を受けました。

俳句の形は自由でもよいと知っていましたが、これまでは自由に作る俳句が生み出す価値のようなものを探していました。ですが、価値はそれぞれにあり、なにより大事なのは俳句を届ける相手と出会えた奇跡や人を想って紡いだ言葉一つ一つなんだなと思いました。

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釜ヶ崎大学は、普段表コミで学んでいるように、話し言葉以外の方法でコミュニケーションを取る機会が多くあった。(中略)普段は話し言葉に頼ってばかりであるが、表情であったり、肌で触れ合ったり、俳句のように文字を起こしたりして、様々な伝達方法を駆使して自分の気持ちや考えを表現できる豊かな人になりたいと思った。

 

【街歩き~釜ヶ崎探索~】

WSを終えた後は、伊藤さんに案内してもらいながら釜ヶ崎の街を実際に探索しました。事前学習で読んだ資料や画像よりもリアルタイムな、釜ヶ崎を体感しました。

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資料で見ていた三角公園には新しいテレビが設置されていた。

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西成区内職あっせん所を内部まで見学させていただく。

流行のボードゲームに使用するカードホルダーを作成している。

 

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西成あいりんセンターは施設の老朽化により閉鎖されていた。

 

さらには、「ひと花センター」*1へ訪問し、施設職員さんからセンターが実施している様々な地域参画プロジェクトの説明をしてもらいました。

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生徒の感想

町としては(建物が)きちんとあるのに、なぜ人が外で寝ているのか、通る人は何も思わないのか、西成から少し行けば市街だということが受け入れられなかった。(中略)歩いていると「今の日本は冷たい」と書かれ訴えられている板があった。私はそれを見て、どうしたらいいか分からなかった。今その板を見て通り過ぎていることがもう冷たい気がして、悔しかった。

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 高齢者の男性の方がほとんどでとても驚いた。公園に小屋を建てて住んでいたり、とても狭い部屋に住んでいたり、私が目で見たのはほんの一部でしかないけれど、たくさんの問題を抱えているということを理解した。

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ココルーム、ひと花センター、あいりんシェルター、他にも散髪をしてもらえたり、ご飯を配っている人がいたり、私が思っているよりたくさん支援している人や団体があることを知った。また、少しでも街を明るくしようと様々な場所に「アート」がちりばめられていた。アートは、人が誰かを想ったり、何か伝えたいときに生まれるのだなと感じた。美術館や劇場にある芸術は確かに素晴らしいが、町中にさりげなくある芸術もそれと同等の価値があるように思った。

 

 

同じ大阪の住民でありながら、全く知らない町だった「釜ヶ崎」。事前学習による資料だけではなく、実際に目で見て歩き、空気を吸うことで得られた発見が、多くあったのではないでしょうか。

 

ココルームにて講義をしていただいた先生方、代表の假奈代さん、参加者の皆様、

そして大変暑い中、2回の街歩きを案内してくださった伊藤さん、

ひと花センター、西成区職あっせん所のスタッフの皆様、

ありがとうございました!

 

次回は事後学習の様子と、全体のふりかえりを紹介します。

 

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*1:ひと花センターひと花プロジェクトはあいりん地域にて単身高齢で生活保護を受給している方の社会参加、および生活支援のプログラムを行う事業として2013年7月にスタート。プログラムをきっかけに、友人や仲間ができたり、生きがいを見いだしたり、地域に貢献することで、地域・社会とのつながりをつくり、孤立を防ぎ、ひとりひとりが活き活きと暮らし、そして地域も活き活きする活動をめざしています。