京都府が主催する「文化を未来に伝える次世代育み事業」(学校・アート・出会いプロジェクト)として、舞踊の福岡小百合先生を中心に、表コミ1期生(高校3生)有志が八幡支援学校中学部生徒の皆さんと一緒にダンスの授業を行った『ダンスパレード!』。
1月26日をもって、全5回の授業が終了したので、ここで写真つきでご紹介したいと思います!
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【はじめに・・・】
追手門学院高校表現コミュニケーションコースの目標は、これまで学んできたコミュニケーション力を活かして、支援を必要とする人についての理解や関わり方を学ぶこと。
そして、舞踊の福岡小百合先生を中心に、授業の内容も一緒に考え、進行する「ファシリテーター」としての力を身につけること。
授業をつくる側に立つことで、卒業後、さまざまな人が共に生きる社会のなかで周りをひっぱることのできる力をさらに獲得できるように挑戦します。
※詳しい事業や取組みについては過去記事をご参照ください。
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【八幡支援学校×追手門学院高校!】
★第1回目★
初回の授業は、昨年の12月。
初めての授業は、「 中学部のみなさんとの出会い と ダンスの授業のはじまり を心に残るものにしよう」という目標で取り組みました。
高校生も初めてのワークにどきどき・・・事前に入念なリハーサルです。
まずはこれからのダンスの授業に興味をもってもらおう!ということで、エポックパレードという曲でダンスを披露しました。
クリスマス前だったので、サンタやトナカイがいますね♪
高校生の全力のパフォーマンスに盛り上がったところで、
自己紹介をかねたポーズダンス!
高校生、中学部生徒、先生など、その場にいる全ての人が自分の名前ポーズを紹介、全員分みんなで同じポーズをとりました。
個性があふれる自己紹介ダンス。八幡支援学校のみなさんも事前に考えてきてくれました。
中学部生徒も高校生も先生も、ミックス!
この日は、中学部は3チームにわかれて、高校生は午前と午後で合計3回の授業を行いました。
合間のお昼休憩時には、高校生が教室にお邪魔して一緒にご飯を食べたり、休み時間に体育館で遊んだりしました。
授業時間以外の交流で「こんな遊びをしていた!」という高校生からの情報を受けて、福岡先生が午後の授業にその動きを取り入れるなど、授業の受け手に合わせて柔軟にプログラムを変える様子も見られました。
【ダンス発表に向けて・・・】
★第2回目★
お正月休みを挟み、年明けに授業を行いました!
今回は、参加できる中学部生徒が一度に集まりました。
高校生からは、前回とは人数が増えた分、自分の思い通りに動けなかった・・・という事後の感想も見受けられましたが、中学部生徒の「ダンスの授業を楽しむ!」という積極的な姿勢に助けられました。
そして、自己紹介ダンスやアップを行った後は、次回のダンス発表に向けて一回目に高校生が披露した「エポックパレード」の練習をしました。
「山を越える」「タケコプター」「植えた種がにょきにょき伸びてきた~」などなど、福岡先生、高校生の声かけに合わせて中学部生徒も自分なりの表現方法で体をめいっぱい動かします!
高校生は見ている人も思わず踊りたくなるように一緒に体を動かしました♪
授業終了後は本番の場所(野外)でリハーサル。
中学部生徒も、お昼ご飯を早く食べてリハーサルに参加してくれました!!
★第3回目★
いよいよ「エポックパレード」の発表の日!
当日は、八幡支援学校の公開研究会が実施されていたため、その参加者に向けて、お昼休みに、八幡支援学校中学部×追手門学院高校のダンスを披露しました。
高校生は、今日はファシリテーター(進行役)としての一面を持ちつつも、パフォーマーとして観客も意識しながらダンスを行う必要がありました。
「ひとつのことだけでなく、同時多発的に色々な物事を実行する。」
これは、3年生が表コミで取り組んだ演劇や舞踊で常に求められてきた力でした。
この力を存分に発揮して、いざ発表です!!
中学部生徒のみなさんは、前回の授業後から毎日「エポックパレード」の練習をしてくれていたようです。
それぞれ、リボンや髪飾りで衣装も準備万端です★
お天気が危ぶまれていましたが、当日は快晴!
野外の会場でめいっぱい体を動かしました。
中学部生徒と高校生で一緒に動きを作るシーン。お客さんもいっぱい!
最後は練習の成果!「エポックパレード」を披露!
一度、中学部生徒と高校生で踊った後、お客さんを巻き込んでもう一度ダンス!!
スーツ姿のままで参加するお客さんもおり、会場にいる皆さんと一緒に体を動かす、ということを共有できた瞬間でした。
ダンス後、一緒に踊った中学部生徒を見送る高校生。こんな衣装でした~
【ラストダンス!『各駅停車の旅』】
★第4回目★
最後の2回、中学部生徒は学年ごとのチームに分かれて、ダンスを創作・発表しました。
テーマは、『各駅停車の旅』!!
どんな乗り物?どんな経路?どんな停車駅?
高校生がリードしながら、中学部生徒の個性豊かな発想を活かしながら、ひとつの旅の物語を作っていきました。
作品の大きな枠は、事前に高校生が相談。
わかりやすく、さらに、中学部生徒の動きを引き出せるようにするためには、どうすればいいだろう・・・?フラフープやボールなど、小道具もポイントです。
いよいよ授業!・・・中学部生徒がペンを取っています。
テーマが決まったら実際に動きをつけていきます。
ストレッチで挑戦した動き(足上げ)をさっそく取り入れています★
チームでひとつの乗り物を生み出します。なかなかの迫力です!!
★第5回目★
いよいよ「ダンスパレード」、最後の授業です!
そして『各駅停車の旅』、発表の日です。
最後の授業には、中学部生徒の保護者方々、そして、追手門学院高校からは表現コミュニケーションコースの高校2年生が授業見学に来ました。
発表の前に、まずは体を起こします。
授業を重ねるうちに、大人数でもスムーズに指示が通るようになりました。
体とおし中♪
中学部生徒と高校生のペアはもちろんのこと、中学部生徒同士でもきちんとワークに取り組むことができます。
顔のマッサージ♪すりすり
体が動くようになったところで、前回アイディアを出し合った『各駅停車の旅』の練習です。
実は、前回の授業後、中学部生徒のみなさんから出たアイディアを取り入れて、練習しやすいように高校生が流れを整理しました。
絵や色をつけて見やすさ、そして楽しさを重視!班によって異なる特徴が見られますね。
八幡支援学校の先生や福岡先生のアドバイスで、
「発表の流れを絵と文字を使って書き、それを見せながら説明する→実演して想像をふくらます→実際にやってみる!」といった三段階の説明を行いました。
どうすれば相手に情報を効果的に伝えられるかは、相手のことをしっかりと考えて工夫することが大切です。
さて、いよいよ発表!
1年生 「95号、出発!」 ヘリコプターで祇園へいきました。
2年生1班 「しずおか号、出発!」 静岡経由宇宙行き!お星様を食べました。
2年生2班 「3年生へのだいいっぽ」 ホンダのバイクで横浜水族館へ!
3年生「ありがとう旅号」
中学部卒業を前に、感謝の気持ちを込めて・・・
新たな道へ、いってきまーす!!
それぞれの学年班、すべての参加者が、個性のあふれる作品を発表することができました。
また、他の班の発表を観ることによっても、仲間の新しい一面を発見することができたのではないでしょうか。
ここで、最終授業を見学した高校2年生の振り返りをいくつか紹介します。(一部抜粋)
その人その人に合った対応の仕方を考えるために、言葉で意思を読み取れない分、行動やちょっとした仕草、顔の表情の変化などを読み取っていかないといけないのだなと思いました。言葉で通じ合えなくても、ダンスを使えば、感情の共有も、コミュニケーションも取れてダンスの力はすごいなと心から思いました。
先輩方も先生方も30何人の生徒たちを団体ではなくて、個人対個人として向き合っていたからこそ、1人1人がいきいきしていました。表現は色々あってダンスを上手に踊れなくたって、人に伝わることはあると感じました。
みんなが違う色で、独自の見方があって、自分たちが心で感じたものを自分なりの感覚で表現している姿が本物の個性なんだなと思いました。
さらに“ダンスで人と繋がる”という意味も、今日で理解が変わりました。今までは、周りのお客さんと繋がるしか経験したことがなかったので、考え方や捉え方が浅かったのですが、今日で、歳が違っても、性別が違っても、障害があってもなくても、うまく踊れても、踊れなくても、“踊る”ということを通じて“心で繋がっている”というか、なんかお互いを認め合うことなんだと思いました。
すべての発表が終わり、最後は第3回目で発表した「エポックパレード」を踊りました!
紙ふぶきも登場!
「エポックパレード」は、もう完璧!
有終の美を飾りました。
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以上が、「文化を未来に伝える次世代育み事業」(学校・アート・出会いプロジェクト)
八幡支援学校中学部×追手門学院高校表現コミュニケーションコース
『ダンスパレード!』の全5回にわたる授業の様子でした。
回を重ねるごとに、中学部生徒も高校生もひとつひとつ学びを重ねていき、たくさんの動きや、それに伴うコラボレーション作品を生み出すことができました。
この合同授業を通して、具体的に高校生はどのような発見をしたのでしょうか?
それでは、最後に、実習に参加した高校3年生の『ダンスパレード!』振り返りを一部抜粋して紹介します。
※原文ママ、緑字()は補足部分。
今回の実習で、いくら綿密に計画を立てても、それ通りに進まなかったり、どうなっていくかの予想が上手く立たない状況で大きく事を動かしていく怖さも身をもって体感したし、その場その場の判断力とか柔軟な対応ができる力がどの場面においても大切なんだっていう事も学べた。
私は、この実習に行く前、支援学校だから覚悟を持ってやらないとと思ってました。でも、最初の授業から皆は楽しそうに授業を受けていて、私たち高校生にも心を開いてくれていて素直な子ばっかりだという印象でした。
(中略)
青の広場(交流広場)でエポックを踊ったとき保護者の方、先生方、八幡高校(京都八幡高校)の人が一緒に踊ってくれたときは感動で涙をこらえるので必死でした。みんなが一つになれたことが本当に嬉しかったです。
(中略)
やっぱりダンスの持つ力はすごいと再認識です。人とのつながり、絆、心をかよわせることができる。言葉よりも人の心、身体にスッと入り、言葉では表現することが難しい何かを感じることができると思います。
支援学校の子達がわたしたちのことをちゃんと覚えていなくてもダンスをして楽しかったという感情だけでも覚えてくれたらしっかり伝わったんだなと思います。
○気づいた事○
- ワークを重ねていくごとに体の動きが自由になった。
- 視野が狭いと同時に進めづらくなる。
- 関わり方は自然だけど一人一人に寄りそって向き合いながら引き出していくこと。
- 自分で雰囲気を作っていく。
- 言葉を交わさなくても相手を思いやれる
- 空間把握をして常に向き合っている人以外のことにも目を配る。
- ダンスで人と人はつながれる。
- 判断力と決断力も自分で判断する。
- 言葉だけで説明するのではなくて動きを明確にして説明することの難しさ。
○感想○
事前学習で一番最初に行った時、先生が言っていたほど衝撃はなく、すんなり受け入れられた。もっと知りたいと思い、人に興味を持つということは、こういうことだったんだと感じました。
障害があるからどういう接し方をするとかではなくて、一人の人間として向き合いました。すると思っていた以上に素直な反応が返ってきて、あっ!つながった、と思える時が何度か感じられました。
(中略)
最終日では、今までの重ねてきた回数がしっかり身についていて、(中学部生徒が)どんどん自分からダンスを生み出していて本当にびっくりした。それと同時に心のそこから嬉しく思えた。
ここで学んだことを今後の私に活かすため、社会で活かすために、私はこのコースに入ったので、ここからが勝負だと思っています。
私はコミュニティダンスの存在を世の中の人にもっと知ってもらいたいです。
日本は自己主張を苦手とする人が多くストレス社会となっているし障害について理解できない人がまだまだいると思うので、このコミュニティダンスを通して体でお互いの自由な発想を認め合い補い合うこの関係を築き上げると思うからです。
また弱いものいじめの社会、妬み合いの社会、そんな殺伐とした社会じゃなくて、人と人がちゃんと繋がって、もっともっとみんなが安心できる幸せな空間となる社会をつくっていきたいです。
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今回、「ダンスパレード」に参加した3年生は、1月31日に卒業式を迎えました。
振り返りにもあったように、今回の合同授業で得たものを、卒業後の進路で活かすことができることを願っています。
また、この実習を実現するにおいて、本当に沢山のご協力をいただきました。
まずは、機会を設けてくださったJCDNの神前さん、
そしてアシスタントに入っていただいた高橋芽生子さん、
そして、合同授業実現のために、生徒の一日のスケジュールを調整してくださったり事前に準備を進めていただいた八幡支援学校の先生方。
日々の生活を支え学校に送り出してくれた、中学部生徒、そして高校生の保護者の皆様。
その他、関わっていただいた全ての皆さまに感謝いたします!!
本当にありがとうございました!
今後の予定としては、今回見学に来た高校2年生が、3月に高齢者施設にてダンス実習を行います!
現在は事前準備期間!先輩の姿を見て、実習に臨みます。
頑張りましょう!
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HPはこちら
Twitter→@otemon_hyocomyu
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